「Aちゃんの心が解らなくて、親として情けない」
こう涙ながらにおっしゃったのは、生徒のお母様。
いつも凛として素敵で、私の憧れる女性のひとりです。そんなお母様からこのような言葉を聞いたこと、私はこれからもずっと忘れることができないと思います。
「本人の気持ちは本人にしか分からない」という前提に立つこと
このお母様には、私がAちゃんの気持ちを細やかに理解できているように映っているのかもしれません。周りに理解されづらい過眠症の元当事者だった私は、もしかするとAちゃんの気持ちを、他の人と比べて理解しやすいのかも?
でも実のところ、私がAちゃんの気持ちを理解できているかどうかは、私にも分かりません。
だって、本人の気持ちは、ほんとうの意味では本人にしか分からないから。
大事なのは、「気持ちを理解すること」ではなく「本人の気持ちは本人にしか解らない」という前提に立つことだと思います。その上で、「本人にしか解りっこないからこそ、解ろうとして寄りそうこと」。
親の姿勢次第で、子どもは大きく成長する
私は、このお母様をとても尊敬しています。
子どもに「こうあってほしい」という親の願いを隅に置いておいて、いつもAちゃんと丁寧に対話を重ねているのが分かるから。
Aちゃんは、少しずつ、自分の気持ちを表現することができるようになってきたと思います。学力面だけではなく、精神的にもとても成長しました。この成長は、お母様とAちゃんの対話があってこそだったと思います。
自分の気持ちを言葉で表現できるようになったお子さんは、自分の気持ちを自分で落ち着けられるようになってくるケースがとても多いです。
小学校高学年は、難しい思春期の入り口。周りの人に頼る勇気を
親子の関係とは、他のどんな関係性とも異なり、複雑な感情を伴います。特に、思春期においては。
Aちゃんも、親子の関係性において話せなかったことを、たまたま先生という立場の私に打ち明けてくれた。ただそれだけのことであったと思いますが、少しでもAちゃんとお母様のお役に立てたのなら、いち教師としてうれしい限りです。
小学校高学年は、思春期の入り口。時々(またはしょっちゅう)、親子ですれ違ったりぶつかったりしてしまうことはあります。それは本気で向き合っているからこそであり、ちっとも情けなくなんてないと私は思います。
・・・と、親としてはまだ0歳の私からでした。何かの参考になりましたらうれしいです。